アクションラーニングを就活に活用

質問形式の会議で主体的な思考、行動を促す

問題解決とチーム育成を同時に行う組織開発の手法である「アクションラーニング」を、企業や学校における課題解決、さらには学生の就活に導入する動きが広がっている。このアクション・ラーニングを採り入れた成果事例の報告会が12月7日、神戸市内で開かれ、大学生の就活に生かす京都教育大学の事例などが紹介された。

寄り添いながら指摘を問いに変える

米国の人材開発学の専門家、マイケル.J.マーコード氏が開発したアクションラーニング・マーコードモデルの普及に努めるNPO法人日本アクションラーニング協会代表の清宮普美代氏は「問題解決とチーム育成をバランスよく同時に行う仕組み」とアクションラーニングの概要を説明する。中でもマーコードモデルは質問形式で会議を進めていくことが特長。会議の参加者は4~6人ほどで、問題を提起する人と、質問をぶつけるメンバー、場の雰囲気づくりをするコーチで構成される。メンバーは指摘や詰問ではなく、問題を明確化するために問題提起者に寄り添いながら指摘を質問に変えて問いかけをしていく。「問題提起者は1対1ではなく他の参加者がいることで安心して質問を受け止めることができ主体的に考えることにつながる。また、多様な切り口の質問がなされるので、問題提起者だけでなく他のメンバーにも新たな気づきが生まれる」と清宮氏はその効用を説く。
 同協会では質問会議でファシリテーターを務められるアクションラーニングコーチの養成を行う一方、毎年優秀プログラムをエクセレントアワードとして表彰している。今年度のアワードを受賞したのは滋慶学園グループ。その担当者である稲岡隆輔氏から事例紹介があった。

実践と研修の繰り返しで気づきが増える

同学園は医療、福祉、コンピュータ、音楽など75の専門学校と1つの大学院大学を運営し、教員1400人、職員800人、学生3万5千人を抱える。高等教育を取り巻く環境についてここ30年で18歳人口が3分の2に減る一方で大学数は1.5倍に増え、大競争時代を迎えている状況を説明。その中で教員の資質向上が以前にも増して求められるようになっていることを強調した。ただ「本学園の教員は実務卓越型が多く教職課程を経ずに教えている人が大半。教員が授業を見て評価する公開授業をやるのだが、評価する側の経験則から厳しい指摘が飛ぶことが多く、成長の機会につながっていなかった」という。
 そこで公開授業に質問会議を導入。授業者はまず研修を受けた上で授業を実践し、その後公開授業で新たな気づきを得て、また実践するというサイクルを繰り返している。併せてコーチの研修も同時に進め、公開授業にコーチとして参加しながらこちらも実践と研修を繰り返す。「教える、習うという関係で成り立つ研修でも気づきはあるが、そこに学ぶ、育むというOJTを入れることで気づきが増える」。質問会議の導入後、授業者、コーチともに公開授業の評価が格段に上がったという。
 パネルディスカッションでは。甲南女子大学と金城学院大学でリーダーシップを養成する講義を通じ学生にアクションラーニングコーチの育成を行っている事例が紹介された。甲南女子大学の佐伯勇教授は、リーダーシップの定義について「チームの目標を達成するために他のメンバーに与える影響力」と説明。プロジェクト型学習と経験学習の行き来で授業を進め、授業の運営は先輩学生のアクションラーニング学習アシスタントにゆだねているという。今年度は日本アクションラーニング協会のコーチ資格取得に挑み、学生2人が合格した。また金城学院大学では質問会議を中核に据えたアクションラーニングによっリーダーシップ育成を目指すカリキュラムとし、200人の1年生に30人の2年生がファシリテーターとして参加。今後はコーチ資格取得にも取り組む。

就活の悩み、先輩コーチがサポート

また京都教育大学では2015年12月から「就職活動をする学生同士が主体的に就活の準備をする流れができるように」とアクションラーニングを活用している事例が紹介された。
その理由について同大学キャリアカウンセラーの清水伸剛氏は「教育大学だが、近年は教員を目指さない学生が増えており、学生への就活にじゅうぶんな対応ができていなかったこと。また、教員以外を志望する学生はレールを外れた状態となり、孤立しがち。そこで先輩のノウハウを知ったり、横のつながりをつくる情報共有の場が必要とされていた」と導入に至った思いを語る。
 3年生を対象に10~12月に月2回、アクションラーニングによる集団カウンセリングを実施し、「進路について悩んでいる」「自分の長所、強みがわからない」「就活の進め方がわからない」といった学生一人ひとりが持つ課題に対して、他の参加メンバーが質問する形式でアクションラーニングを行う。そこにコーチ役として携わるのが就職活動を済ませた4回生だ。内定を得た4回生に対しあらかじめ研修で、ファシリテーション、リーダーシップ、発言力・質問力・傾聴力などのスキルを身に付けた上でコーチ役を務めている。
 質問会議形式の集団カウンセリングを実施して5年になる。「発言するのが苦手な学生でも最初は質問を繰り返すことから始め、だんだんと意見が言えるようになったことで集団討論選考の通過率が上がった。また、先輩とのつながりができ就活体験やノウハウが後輩に繋げられる機会になった。さらに、カウンセリングをもとに就活でこうしていこうという行動計画が立てられるようになりスムーズに就活に入れるようになった」と清水氏は3つの効用を挙げ、今後もこのやり方を継続していく考えを示した。
 また、給湯機メーカーのノーリツからは、学生アクションラーニングコーチに会議に参加してもらうことで学生視点の素直な質問が出てくることで気づきが増えるメリットがあることが報告された。
 フォーラムの最後には、甲南女子大学の学生アクションラーニングコーチのファシリテーションのもと参加者によるセッションが行われ、世代、立場を超えてフラットに質問形式で議論できるアクションラーニングの特長を参加者は実感していた。
 今回の報告会は、一般社団法人大学コンソーシアムひょうご神戸、会場を提供した日本テクノロジーソリューションの協力のもと開催された。