就職?進学? 高校生の進路に豊かな選択肢を

大学生の就職活動に比べ、高校生の就活の実態は思いのほか知られていない。高校生の就活をサポートし、企業と橋渡しをするサービスなどを手掛ける株式会社アッテミーの吉田優子社長に高校生の就職活動ならではのルール、コロナ禍による変化、その変化を受けた同社の新たなサービスの取り組みについて話を聞いた。

9割以上は学校あっせんで就職先が決まる

―高校生の就職活動はどのように行われているのでしょうか。
 高校生の就職活動は大学生のそれとは異なり、9割以上が学校あっせんといって、高校生と企業の間に学校が入って就職先が決まります。権利としては企業と直接接触する「自己開拓」も認められていますが、そのための仕組みはないのでごく一部にとどまっています。また、家族の紹介による「縁故就職」もありますがこれもごく少数です。
また、就職活動のスケジュールについても職業安定法によって厳格に決められています。まず、7月1日に企業の求人情報が解禁されます。企業があらかじめハローワークに申請していた求人票を7月1日に取得し、学校側に郵送、もしくは持参します。学校は一例として各企業の求人票の情報を1社1行ずつの一覧表にまとめ、高校生はその一覧表の中から興味を持った企業の求人票を見て、希望する企業を絞り込んでいきます。さらに夏休みに、絞り込んだ企業について1人当たり2、3社ずつ職場見学に行きます。そしてお盆過ぎくらいの時期にエントリーする会社を1社決めます。
例年だとその後9月5日から応募書類を発送することができ、9月16日に採用試験が解禁されます。

制約の多い「1人1社制」

―1人1社制という特殊なルールもあるそうですね。
大学生の場合は1人で同時に複数の企業を受験できますが、高校生の場合は1社ずつしか受験することができません。このため、例えば企業からその高校に1人の求人があって、そこに複数人の希望があった場合、事前の校内選考で成績上位の1人の生徒が選ばれ、その生徒しか受験することができないというルールになっています。採用試験に落とされた場合に初めて次の会社を受験することができます。

コロナ禍で応募、採用試験は1カ月後ろへ

―今般のコロナ禍でスケジュールに変更があったようですが。
 9月5日からの応募書類発送が10月5日に、採用試験の解禁が9月16日から10月16日に、とそれぞれ一カ月後ろにずれました。学校側にとってはその分余裕をもって対応することができます。ただ、生徒の側に立ってみると、採用試験の結果が出るのも後ろにずれるわけで、10月末から11月初めに出る結果でもし落ちていた場合、そこからまた考え直さなければなりません。企業にとっては年末年始にかけての選考が難しいとなれば、結果が出るのが1、2月にずれ込む可能性があります。もしそこでも通らなかった場合、進路未定者が増えることも考えられます。

情報が不足し、アプローチができない

―コロナ禍によって求人そのものへの影響は出ているのでしょうか。
 ハローワークの情報を聞いていると、前年の2割減といったところでしょうか。業種によって偏りがあり、製造業や介護職の求人は引き続き旺盛ですが、飲食・宿泊業は大幅に減っています。ただ、今年はコロナ禍によって学校側も事前に企業と接触できなかったこともあり情報が不足しています。さらに今年は夏休みが短縮されるため、高校生の側も就職活動に時間を割くことができません。こうした状況から企業側もどうしたら高校生に自社のことを認知してもらえばよいか戸惑っているのが現状です。

求人活動をおこなう企業の情報を可視化

―そのような現状をふまえ、御社ではどのような取り組みをしているのでしょうか。
学校側からは企業の情報を、企業からは高校生に認知してもらう場をという声が増えていることを受け、就職を選択する高校生と採用をする企業をつなげる場として、OSAKAしごとフィールド(大阪府)と共催で8月にYoutubeを使ったライブ配信によるオンライン会社説明会を開催します。ライブ配信なのでチャットによる質問もできます。また、アーカイブとして残せるのでその時間に閲覧できなかったとしても都合のいい時間に見ることもできます。
また、企業の求人情報をどう可視化して届けるべきかを考え、弊社が運営しているインターンシップのマッチングサイトを年内限定で企業の会社説明、職場見学のプラットフォームとして無料開放することとしました。すでに会社説明の動画を制作済みの企業であれば、そのタイトルに「#アオハル就職2020」とつけていただくことで、高校生にそのキーワードで検索をかければ求人をしている会社の動画の情報をまとめて見られるようにしています。
この取り組みをきっかけに、高校生が会社の情報を主体的に取りにいく文化が醸成され、自己開拓がひとつの手段として認知されること、ひいては1人1社制についても見直しが進んでいけばよいなと思っています。
アオハル就職サイト https://atteme.com/aoharu2020/

高校生が意志を持って選択できる手助けを

―高校生にとってどのような社会が実現すればよいと考えていますか。
 私たちは、高校生に単に企業の情報を届けるだけでなく、企業を選ぶ力も身に付けてほしいとの思いから、キャリアに関するトークライブを毎週発信しています。私たちの目的は高校生の就職者数を増やすことではなく、高卒就職の価値を高めてキャリアの選択肢を増やすことにあります。高校生と話をしていると、魅力的な大学に進学できないのであれば就職したいという学生もいます。就職することと、大学に進学することを同じくらいの価値に上げて、それでも大学進学を選びますかと問えるような時代になればいいなと思っています。高校を卒業して就職したとしても、そこから通信制で大学に通ったり、大学院に通うこともできます。様々なキャリアアップの道があるということを伝え、高校生が意志をもって進路を決められるようにするための手助けができればと考えています。